【プロが解説】メラミンとデコラの違いは?

【プロが解説】メラミンとデコラの違いは?

この記事では「デコラ」と「メラミン」の違いを、メラミン化粧板でテーブルや建材を制作しているブランド、itamoの山本が解説します。

なお、メラミンはメラミン樹脂の主原料となる有機化合物の名称ですが、メラミン自体は世界中の様々な物に利用されており話がややこしくなるので、この記事の中ではメラミン=建材等で使用されるメラミン樹脂・メラミン化粧板とさせていただきます。

同じものだけど、商標の有無によって呼び方が違う

結論から言うと、建築業界で使われている「メラミン」と、「デコラ」はほぼ同じものといえます。
どちらも芯材に高圧のメラミン層を形成した化粧板ですが、「デコラ」は住友ベークライトという会社が商標を持っているため、他社は「デコラ」という名称を使うことができないという状況が、同じメラミン化粧板である「メラミン」と「デコラ」が別の名前で呼ばれている理由です。

わかりやすく言うと、こういうこと

「サランラップ」や「ホッチキス」は各社の商品名ですが、別の会社が作った「ラップフィルム」や「ステープラー」を見たときでも、「サランラップ」や「ホッチキス」と呼んでしまいますよね。 それと同じなのが、「デコラ」と「メラミン」の関係性です。
商標 一般名称 社名
バンドエイド 絆創膏 ジョンソン・エンド・ジョンソン
サランラップ ラップフィルム ダウ・ケミカル
ホッチキス ステープラー イトーキ
ウォークマン ヘッドホンステレオ SONY
デコラ メラミン化粧板 住友ベ-クライト

デコラは住友ベ-クライト株式会社の商標

「デコラ」の商標は、住友ベ-クライト(旧デコラニット株式会社、2008年に親会社の住友ベークライトに吸収合併される)が所有しています。
特許情報プラットフォームから確認してみると、たしかにデコラは住友ベークライトが商標登録しているのを確認できますね。


住友ベークライトが商標がデコラという商標を保有しているため、国内の主要なメラミン化粧板メーカーであるアイカ、イビデン、デコラックス、アルプス、伊千呂などは「デコラ」という名称を用いずに「メラミン化粧板」という名称で販売しているわけです。

現在日本で一番生産量の大きいアイカはシリーズ名をセルサス、ウィルテクト、フレアテクとなどというように用途別に分けているので、アイカのメラミンは「デコラ」のような一般名称化することはなさそうですね。

「デコラ」はすでに生産終了している

ちなみに、住友ベークライトは2015年をもって元祖「デコラ」60年の歴史に幕をうち、生産を終了しています。世界的に見ても、メラミンの供給は過剰気味になっているというのがこの経営判断に至った原因にあると思われます。
現在のベークライトの製品でデコラの名前を冠しているのは、車輌やバスの内装に使用される「アルミデコラ」のみとなっており、建築や建具業界の人間が今後「デコラ」に関わることはなさそうです。 また、メラミン化粧板の大手の一つであったイビケンも青柳事業場でのメラミン自社生産を打ち切り、ファブレス生産(委託生産)に切り替えるなど、事業縮小傾向が続いています。
国内の最王手であるアイカを始め、国内の残ったメラミンメーカーには国外メーカーに負けないよう頑張って頂きたいと、メラミン化粧板に関わるものとしては切に願っています。

「デコラ」の頃より質が向上している

撮影用の天板としてitamoのメラミンボードを使用した例
印刷技術が進化したメラミン(デコラ)
近年のメラミンの生産技術は格段に向上しており、昔のデコラの印象が強い方が最近のメラミンを見ると驚かれるレベルとなっています。
木目のテクスチャーなども再現されているため、よくよく見てみないと化粧板だとわからないような高クオリティのメラミンも多数発売されています。 また機能的にも進化しており、抗菌、高ウィルス、不燃、スクラッチレス、薬剤耐性など、用途に合わせたメラミンが開発されており、浴室やキッチンの施工にも使用可能です。 今後は「デコラ」ではなく「メラミン」の呼び方が主流になると思いますが、デコラしか見たことがない方はぜひ最近のメラミンをチェックしてみてください。
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